アニメ音楽年代記

サントラ盤を中心としたアニメ音楽の昔話

交響組曲 宇宙戦艦ヤマト

1.交響組曲 宇宙戦艦ヤマト

 音楽アルバムとして最初に発売されたヤマトのLPは、この『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト*1でした。
 今でもアルバムのヒットした一部の作品でシンフォニック・バージョンが発売されることがありますが、いわばその草分けのような存在です。ただ違うところがあるとすればヤマトの場合、音楽集として出たのが当時、このアルバムだけだったということです。

 一口にシンフォニック・バージョンといっても、劇伴を単につなぎあわせてオーケストラで演奏したものから一部モチーフだけを使って完全なオリジナル曲として作り上げるものまで、アルバムによって様々です。この『交響組曲』は劇伴のモチーフをつなぎあわせたもの、独自にアレンジしているものが混在しています。
 あんまり細かいことを書きませんが、アルバムの曲構成と各曲の内容をチェックしておきましょう。

 A1.序曲
     ナレーションバックのスキャット曲を元にシンフォニー化。
  2.誕生
     ヤマトのテーマを含んだ劇伴をいくつかつなぎ、ヤマトの誕生から
     発進までを再構成したもの。
  3.サーシャ
     火星に墜落したサーシャの音楽をアレンジ。
  4.試練
     サスペンスを現す劇伴とヤマトのボレロ調の音楽をつないだもの。
  5.出発(たびだち)
     ヤマトが飛びたつシーンの劇伴をアレンジ。
  6.追憶
     ヤマトのテーマのアレンジ。
 B1.真赤なスカーフ
     エンディングテーマのアレンジ。
  2.決戦 ~挑戦=出撃=勝利~
     出撃、戦闘、凱旋を現す劇伴を幾つか並べてつないだもの。
  3.イスカンダル
     イスカンダルの音楽のアレンジ。
  4.回想
     沖田艦長の最後のシーンの劇伴をアレンジ。
  5.明日への希望 ~夢・ロマン・冒険心~
     序曲と同じスキャットから始まり、オリジナルの合唱が入る。
  6.スターシャ
     このアルバムのオリジナル曲。

 「序曲」「誕生」あたりが劇伴とは違うシンフォニーならではの厚みを感じさせてくれます。これに「明日への希望」を加えた3曲は、BGM集を聴けるようになった後でも全く色あせていません。むしろ、かえって価値がわかるようになったような感じです。純粋にシンフォニック・バージョンとして楽しめるわけですね。「イスカンダル」なども劇伴よりも優雅になっていて、やはり無視できない曲です。
 その他の音楽というと、完全オリジナルの「スターシャ」とオリジナルアレンジの「真赤なスカーフ」を除けば、どれも現在から考えるとアレンジが中途半端な感じが否めません。

 このアルバムの場合、単なるシンフォニック・バージョンとしてではなく、BGM集の代替としてリリースされた意味合いも強いと思うのですが、「サーシャ」「追憶」「回想」での楽器の変更は痛く、「出発」でのサブメロディーのカノンが原曲のイメージを壊してしまっていることは残念でした。
 しかし、当時はヤマトの音楽を聴こうと思うと他に選択の余地がありませんでしたから、劇伴との相違に何か違うなと感じながらも『交響組曲』の世界に浸っていたわけです。

 このアルバムの「序曲」のスキャット、「誕生」は『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降の作品の劇伴に使われるようになりましたから、耳に馴染んでいる人も多いと思います。でも、さすがに「序曲」の後半部分や「明日への希望」のコーラス部分を劇伴に使うようなことは無いだろうと思っていましたが、意外にも共に『宇宙戦艦ヤマトⅢ』 で使われていましたね。

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2.20世紀の"白鳥の湖"

 これは『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』のLPの帯に記されていた文句ですが、ヤマトの音楽はしばしばチャイコフスキーの『白鳥の湖』に比せられることがあります。
 『白鳥の湖』と言えば、当時は「秘打・白鳥の湖*2の時代ですから主題のさわりぐらいは誰でも知っていたのではないかと思われますが、全曲を聴いたことのある人は案外いないのでは無いかと思われます。元々はバレエ音楽ということで、映画音楽に極めて近い構成になっていますので、是非とも聴いてみることをお薦めします。

 『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』が『白鳥の湖』と対比される場合、たいてい引き合いに出されるのが「序曲」と有名な白鳥の主題ということになります。ここで両者を比較することはしませんが、「20世紀の"白鳥の湖"」と言われるとそうかもしれないと思わせてくれるだけのものが「序曲」にあるのは確かでしょう。
 もっとも、他の曲までもがそうだとは当時も思えませんでしたが、とにかく「序曲」はヤマトの音楽をただの劇伴からそれ以上のものにしたと言えるくらいのインパクトを与えてくれました。

 もっとも『白鳥の湖』というのはヤマトを作ったプロデューサーの方が特に思い入れのある音楽らしく、後に『ヤマトよ永遠に』で『白鳥の湖』の一曲が使われたこともあります*3

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3.宮川泰の世界

 ヤマトの音楽を担当していた宮川泰氏は、元々は歌謡曲の世界で活躍されておられたらしく、特にザ・ピーナッツ*4の曲で多くのヒットを飛ばしています。もっとも現在では宮川氏の代表作は一番に「宇宙戦艦ヤマト」が挙げられるようになっているみたいですね。
 アニメ音楽では『ワンサくん』『グランプリの鷹』『宇宙空母ブルーノア』『チルチルミチルの冒険旅行』『オーディーン 光子帆船スターライト』等を手掛けられていますが、上記のうち『グランプリの鷹』以外はヤマトと同じプロデューサーの作品だというところに、何か腐れ縁のようなものを感じますね。

 宮川氏と言えば冗談音楽の第1人者として、以前『題名の無い音楽会』という番組にも出演されていましたが、78年当時にも服部克久氏とのジョイントコンサートのライブ盤が発売されていました。
 『宮川泰の世界 宇宙戦艦ヤマト*5と題打たれたこのライブ盤アルバムにはヤマトの曲こそ『交響組曲』から4曲が選曲されているだけですが、スタジオ録音でない演奏を聴くことも他では滅多にありませんし、何より宮川氏の色々な側面の音楽を聴くことが出来て、かなり後に中古で入手したアルバムに関わらず、新鮮な感動を受けたことを覚えています*6

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4.交響組曲の功罪

 このアルバムの功績というのはアニメ音楽の一ジャンルを日本のレコード界に築き上げたことでしょう。そして、アニメファン以外にも広く聞かれるような土壌を確立したとも言えます。
 それまではアニメ人気に合わせたファミリー向けの商品展開が中心だったと思われるアニメアルバムを、純粋に音楽を求める人向けに切り開くことが出来ました。

 ところが、何でも安直にシンフォニーを名乗るアニメ関連アルバムの先駆になってしまったことも否めません。さらにシンフォニー盤先行の結果、まともな劇伴を収録したアルバムが出されることの無かった作品も出て来ました。
 ヤマトの場合のように、ある程度は劇伴をなぞって、さらに高度な音楽に作り上げている場合は良いのですが、安直にシンフォニー化された中にはそうでないものもありますからね。

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(記事初出 ニフティサーブ・アニメフォーラムマガジン館 94.10.23)

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YAMATO SOUND ALMANAC 1977-I「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」
YAMATO SOUND ALMANAC 1977-I「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」
YAMATO SOUND ALMANAC 1978-I「宮川泰の世界~宇宙戦艦ヤマト」
YAMATO SOUND ALMANAC 1978-I「宮川泰の世界~宇宙戦艦ヤマト」
吹奏楽版の『組曲宇宙戦艦ヤマト」』が入ったアルバム
「宇宙戦艦ヤマト2199」ヤマト音楽団大式典2012
「宇宙戦艦ヤマト2199」ヤマト音楽団大式典2012
ライブ盤じゃないスタジオ録音なら
THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa
THE HIT PARADE Hiroshi Miyagawa
 この『組曲』、吹奏楽版はいくつかCDで聴けるのですが、元のオーケストラ版のCDが出てないという……。レコーディングされてない普通のコンサートで演奏されることが多かったからかとは思いますが……

 

*1:『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』(CQ-7001 77.12.25 ¥2,300)
 後に何度かCD化されていますが、現在は『YAMATO SOUND ALMANAC』の一枚として出てるものが入手しやすいでしょう。

*2:水島新司ドカベン』で明訓四天王の一人・殿馬が編み出した特殊な打法です。アニメ版ではちゃんと「白鳥の湖」をBGMに使っていました。他にもクラシック音楽を使った秘打、秘走、秘守、秘投などが多くありますが、何故か執筆当時それらのクラシック音楽を集めたCDが東芝EMIから発売されていました。

*3:敵の母星がカムフラージュのために作った200年後の地球で、上陸した古代たちが聖総統の宮殿で「第3幕ワルツ」を聴かされました。この曲はいわゆるセレクト盤に入ることはなく、全曲集を買わないと聴けないのですね。

*4:キャンデーズやピンクレディの遥か以前にアイドルをやっていたらしい双子の姉妹。……というより『モスラ』の小美人と言った方がわかりやすいかも知れない。『三大怪獣 地球最大の決戦』で小美人が歌っていた「幸せを呼ぼう」も宮川氏の作曲でした。

*5:宮川泰の世界~宇宙戦艦ヤマト』(CQ-7006 78.--.-- ¥2,300)
 長らくCD化されていなかったアルバムですが、『YAMATO SOUND ALMANAC』の一枚として復刻されています。

*6:その後、晩年の宮川氏は新たに編曲した(交響の付かない)『組曲宇宙戦艦ヤマト」』をオーケストラ・コンサートで多く演奏されていました。これは息子の宮川彬良氏によって吹奏楽版が作られ、Osaka Shion Wind Orchestra等で演奏が続けられています。また、2009年には彬良氏の手によって『交響組曲』のA面再現演奏のコンサートがありました。

ヤマト音楽とドラマ編アルバム

1.ヤマトのサントラ盤との出逢いまで

 私がアニメ音楽に初めて関心を抱いたのは「宇宙戦艦ヤマト」でした。それ以前にも主題歌が好きな作品は幾つかありましたが、劇中のBGMまでも心に残った作品はありませんでした。
 まあこれは年齢に寄るところも多いと思います。ヤマトの最初の再放送(といっても関西在住ですので関東よりは1年ぐらいは早かったはずです)を見たのはちょうど小学校の高学年、ようやく主題歌以外の音楽にも注意がむくようになっていたのかもしれません。

 自分の意志で最初に買ったEP、LPはそれぞれヤマトのものでした。当時は新譜の情報なんて持っていないし、レコード店に行きつけていたわけでもありませんので、ふとヤマトのレコードが欲しくなって買ったのは78年の春のことでした。ちょうど中学校に上がる前の春休みにEP*1を買った覚えがあります。
 それはEPといっても穴が小さくて33回転盤。正確にはLPのミニサイズなのですが、便宜上EPと呼んでいます。A面に「宇宙戦艦ヤマト」と「真赤なスカーフ」、B面に「ドラマ・ガミラス絶対防衛線突入」が収録されていました。

 主題歌2曲はコーラス・グループがオリジナルとは違うロイヤル・ナイツのものになっていましたが、当時はそんな細かいことには気付きませんし、それよりもイントロの前のファンファーレみたいな曲が付いていないとか、ラストがフェードアウトしていないとか、TVで流れたバージョンと違うことに疑問を感じていました。TV音源はレコード発売用とは別個に編集されていることなんて知る由もありませんでしたから。
 でも、「真赤なスカーフ」の伴奏が全然違うのには気付きませんでしたね。この曲の伴奏までは記憶していなかったのかもしれません。
 ドラマはタイトルとは無関係に第3話のヤマト発進シーンと、第22話の七色星団の決戦を編集したものでした。これはこれで、感激したものです。当時テープレコーダーは家にありましたが、カセットが高くてTV放送を録音しようとまでは考えも及びませんでしたので。(小学6年当時、月に500円程度の小遣いで、カセットが1本500円程度だったから……)

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2.宇宙戦艦ヤマト オリジナルサウンドトラック盤

 それからしばらくしてLP*2を買ったのですが、このきっかけというのは偶然手に入れたヤマトのロマンアルバムにあった広告で知ったからです。広告の収録タイトルを見ると、先に買ったEPのドラマのようなものがより多く収録されている感じでした。買ってみると事実、そのとおりでした。
 内容はというと、劇場版に新たに付け加えたと思われる「無限に広がる大宇宙……」というナレーションに続いて主題歌「宇宙戦艦ヤマト」。冥王星海戦の敗退、遊星爆弾を説明するシーンのナレーション。そしてヤマト発進……。以降はナレーションで端折りながら、一部の印象的なシーンのみを収録していると言う感じでした。
 その頃は他にレコードを聴いていたわけでもなく、アニメのレコードなんてこんなものかなと思っていましたが、聴き込めば聴き込むほどBGMに関心がおよび、ドラマ抜きに音楽だけ聴きたいなという思いが高まって来ました。

 このドラマ編のアルバムですが、公称40万枚というアニメ・サントラ史上最高の売り上げを出したと言いますが、高々ドラマ編アルバムが何故こんなに売れたのか、いままで疑問に思っていました。単純なる音楽アルバムならともかく、ドラマ編なんて一部のファンにしか需要が無いのではないかと。
 しかし、いま改めて考えると、ドラマ編だったから売れたのでは無いでしょうか。ファンなら音楽を聴くだけで、そのシーンを思い出し感動することができますが、それは一部の人にすぎません。また音楽のないドラマだけのアルバムなら、やはりファン以外には感動を与えることはできないでしょう。
 ヤマトのドラマは宮川泰氏の音楽と密接に結び付いていて、それはLPのドラマも変わりません。ドラマ編と言っても音楽の占める比重は大きく、しかもその音楽はそれぞれ印象的なシーン*3に使われています。このことにより、このアルバムはヤマトのことをよく知らない人にもヤマトの音楽の魅力を伝えることができたのです。これがこのアルバムのヒットの最大の原因でしょう。
 単なるドラマ編ではなく、名音楽シーン集になっていたのですね。後の作品のドラマ編アルバムが単なるドラマ編でしかなかったのとは大きく異なっています。

 ただし、このアルバムがなまじ売れたためかどうか、あれだけのヒット作にも関わらず、肝心のBGM集は81年になるまで発売されていません。77、78年のブームの時に出ていればかなり売れたアルバムになったことと思われますが、返す返すも残念です。

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3.ヤマトのBGM集が出なかったわけ(?)

 ついでながら、81年に発売されたBGM集*4について、ちょっと触れてみましょう。
 発売されたのが『宇宙戦艦ヤマトⅢ』放映中ですから、初期のヤマトファンの中にはすでにヤマトから離れていってしまっていた人も多かったと思います。熱心なヤマトファンでも、このアルバムの発売を知らなかった人がかなり多いようです。
 内容はTVサイズの主題歌2曲と主要なBGM。もちろん多くの未収録曲が有り、それらは現在はパート1のLD-BOXのおまけとして聴くことができますが*5、選曲的には主要曲を網羅*6してはいます。ただし、曲間が詰まってしまっているのが難点で、プレーヤーで選曲して聴く時、針を落とす位置に苦労しました。

 いささか発売時期を逸したアルバムでしたが、どういう形であれ、発売されたということに意義が有り、ヤマトファンにとっては嬉しいことでした。現在なら、それなりにアルバムの売れる作品なら未収録BGM集まで出してくれる感じですが、当時はヤマトのような超ヒット作品でもなかなかBGM集は出なかったのです。というより、超ヒット作品だったから出なかったのかもしれません。
 現在ではCD化を前提にBGMが作られていますが、当時そういう発想はなく(そもそもヤマトLPのヒットから考えられたことですから)、レコード化の際には新たにレコーディングされるのが普通だったようです。当時もBGMそのままに収めたアルバムもぼちぼち出始めていたようですが、それらの多くは新たにレコーディングする予算が無いためにTV用のBGMを流用していたというのが真相ではないでしょうか。
 ヤマトに関して言えば、ずっと後、『完結編』に至ってもコロムビアから出ていたサントラ収録曲の多くは実際に劇中で用いられたものと違うバージョンでした。

 レコード発売するからにはTV用音源よりも立派な音楽にして出したいという意図もわからなくは無いですが、TVで馴染んだ曲との相違点が大きいと、やはり物足りなく感じてしまいます。ヤマトのアルバムについては、一部を除いて最後までそういう意味で失望させられ続けて来ました。
 しかし、それでもヤマトのアルバムに期待を抱き続けて来たのは、ヤマトの音楽の素晴らしさのためです。

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4.そして……

 最初のサントラ盤はBGM集ではなく、ドラマ編として出たヤマトですが、ヤマトの魅力の大きな要素が音楽であることは動かし難い事実であり、次いでシンフォニック・アレンジの『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』が発売され、そしてブームの高まりの中、続編『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が公開されます。次回はこの辺りを扱ってみる予定です。

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(記事初出 ニフティサーブ・アニメフォーラムマガジン館 94.10.17)

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LPはともかくCDはかなり入手困難みたいですね
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1 オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト Part1
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コロムビアミュージックエンタテインメント 2005-05-17
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*1:宇宙戦艦ヤマト』(CH-53 77.07.01 ¥700)

*2:宇宙戦艦ヤマト オリジナルサウンドトラック盤』(CS-7033 77.07.25 ¥1,800)
 このLPは90年代半ばにヤマト関連のアルバムが一斉にCD化された際にラインナップの一つとして復刻されています。
  『宇宙戦艦ヤマト ―ドラマ編―』(COCC-12477 95.04.01 ¥2,427)
 また、2010年代になって出た『YAMATO SOUND ALMANAC』の全巻購入特典にもなっています。

*3:例えば「艦隊集結」というBGMがあります。この曲はヤマトの発進シーンやドメル艦隊の集結シーンに用いられていて、どちらかが印象に残っていると思いますが、このLPには両方のシーンが含まれています。

*4:『TVオリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART1』(CX-7008 81.01.25 ¥2,500)
 これも90年代半ばにヤマト関連のアルバムが一斉にCD化された際にラインナップの一つとして復刻されています。
  『TVオリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART1』(COCC-12869 95.09.21 ¥2,621)
 のちに『ETERNAL EDITION』や『YAMATO SOUND ALMANAC』のシリーズで商品化されたBGM集はそれぞれ別の構成で作られていますので、アナログ盤をそのままCDにしたのはこれと2005年の再発売盤だけです。

*5:原文の執筆当時の話。LDの各面の空き容量に数曲ずつ収録されてたわけですから、聴くのは非常に面倒でした。後に『ETERNAL EDITION』や『YAMATO SOUND ALMANAC』でほぼ全曲網羅されたCDが出ていますので、今や昔の話です。

*6:オープニング・スキャットからヤマトが地球を飛び立つシーンの音楽、デスラー登場の音楽、ワープ……等々、シーンとともに思い出すような音楽はほとんど入っているでしょう。ただしマニアになるとこれだけでは満足できないのですが。

語られるゲーム音楽と語られないアニメ音楽

(これは10年ぐらい前に一度、この連載を掲載しようとした時の序文です。昨今、一部の人気作品でオーケストラコンサートが開かれたりして劇伴音楽自体にもスポットが当てられてきていますが、アニメ音楽全体から見れば基本的な状況は変わってないように思うので、ここに掲載しておきます) 

 

 昔の連載では最初に自分とアニメ音楽との来歴について書いていたのですが、そういう個人的な話は書いても面白くないだろうから、その代わりに日ごろから常々、疑問なり不満として感じてる点を問題提示として取り上げてみましょう。

 さて、この連載の主題はアニメ音楽に関することです。アニメ音楽といってもいわゆる主題歌等のアニメソングを含めた広義のアニメ音楽ではなく、主に劇伴音楽を指す狭義のアニメ音楽です。
 いまや日本のアニメはオタク文化の広がりとともにメジャーな存在となってきましたが、そのアニメにとっては昔から絶えず不可欠な要素でありながら、ほとんど語られて来なかったのがアニメ音楽ではないでしょうか。
 確かに菅野よう子川井憲次の音楽が注目を浴びたり、時々断片的に取り上げられることはありますが、継続的に音楽の動向が分析されたり、ビッグネーム以外の作曲家に陽が当ったりすることは皆無といって良いでしょう。
 逆にアニメソングの方は飽きるくらいに語られています。アニメ音楽専門誌と名乗って発行された雑誌なりムック本が実際はアニメソング専門誌だったというのは、珍しくもありません(というか、ほとんど全部) 中にはアニメソングには劇伴も含まれるとしたり顔で語る人もいますが、それに与することはできません。

 ところで、アニメの近縁ジャンルであるゲームの世界では、ゲーム音楽というのは確実にひとつのジャンルとして確立されています。アニメ音楽と違ってゲーム音楽は語られる存在として認められているのです。
 この違いは何なのでしょうか? メディア的な違いからゲームはアニメほど語るジャンルの数が少ないから音楽にも注目されているのでしょうか? あるいはあまりにコア過ぎる趣味だからかえって尖鋭化して目立ってるだけなのでしょうか?
 そうではないと思います。

 ゲームの世界ではアニメソングのような「ゲームソング」というべきジャンルは確立されていません。ゲームソングは今はまだゲーム音楽の一部としか認識されていないのでしょう。そもそもアニメソングは『鉄腕アトム』の時代から存在してアニメとともに発達してしましたが、ゲームソングが出て来たのはゲームハードがCD-ROMなりPCM音源を備えてサンプリング音源を再生できるようになってからのことで、まだ歴史は古くはありません。それまでは音楽はあっても歌は無かったのです。(観賞用のイメージソングとかならそれ以前にもあったでしょうが)

 アニメの場合はその初期の頃からアニメソングという語られ易いアイテムがあったのに比べて、ゲームには長らくそういうものは存在しなかったのです。したがってゲームの音楽を語るとなると必然的にBGMの話にしかならないので、それがそのままジャンルとして定着したのでしょう。
 逆にアニメの方はなまじアニメソングという語られ易いアイテムがあったがために劇伴の方は放置されてしまい、一定のコアなマニアはいるものの、広く語られる対象のジャンルとしては確立されることが無かったのでしょう。

 確かにアニメの劇伴を語ることはアニメソングを語るよりも相当に難易度が高いでしょう。歌詞と歌手のことに触れればそれなりに様になるアニメソングと違って、劇伴にはそんな「見える要素」は存在しません。内容に触れるには音楽の素養が必要ですし、文字で書いて理解させるのも困難でしょう。でも、だからこそ語られる意味はあると思うのですが。ま、日本の場合はテレビの映画音楽番組等で取り上げられる邦画の音楽も歌物ばかりという傾向もありますから、ゲームの世界の方が異質なのかもしれませんが。
(もっとも、邦画の映画音楽が歌物ばかりなのは歌物以外のスコアが残ってないとか、歌手で視聴率を稼ぐ目的とか、いろんな事情があるとは思います)

 ま、ゲーム音楽とアニメ音楽の大きな違いといえば、ゲーム音楽はステージなりシチュエーション単位で流しっぱなしのものが多く、プレイヤーは何度でも繰り返し聴けるのに対し、アニメの音楽はシーンごとにきっちり使い分けられていて、視聴者との出会いは一期一会ということですね。アニメもパッケージソフトで繰り返し見てると話は別ですけど、ゲームの方が音楽の印象を与えやすいのも確かです。アニメの方も変身シーンとかで何度も使われる音楽もあって、そういう馴染みのある音楽は語り易いでしょうけど。

プロローグ

(これはオリジナルの会議室に掲載した序文を、現状に合わせて改訂しました)

 アニメ音楽に目覚めたのは「宇宙戦艦ヤマト」の音楽に触れた時からでした。それまでのアニメ作品では、主題歌や挿入歌を覚え、口ずさむことはあっても劇中のBGMにまで関心を抱くことは無かったのですが、ヤマトは主題歌も魅力的ながら、その華麗なBGMにまでも魅せられてしまいました。
 生まれて始めて自分が買ったレコードはヤマトでした。そしてヤマトブームと前後してヤマトのアルバムが多く出るようになると、中学生当時の小遣い程度ではままならず、その度に親にねだって買ってもらったことが、つい昨日のように思い出されます。
 高校、大学と、自由になる小遣いが増えても、その用途のほとんどはアニメのレコードでした。ヤマトは、そして松本零士作品は消えたけど、その代わりにもっと広くいろいろな作品の音楽に触れられるようになりました。

 一時期、アニメの音楽よりもゴジラ等の伊福部音楽のほうに主点が移ったこともあります。音楽に魅力のある作品を感じられなくなったこともあります。最初は劇伴中心だったのに、いつしか主題歌の収集にまで広がったりもしました。
 アナログ盤からCDへの移り変わり。旧盤そのままにCD化されるもの、独自に再構成されてCD化されるもの、そして望めども一向にCD化されないもの・・・。アニメ音楽そのものでないにも関わらず、いやがおうにも様々な影響を与えてくれました。

 宮川泰羽田健太郎久石譲川井憲次田中公平鷺巣詩郎・・・時代によって中心に聴いて来た作曲家の顔ぶれも変わって来ました。そして、音楽の演奏形態もオーケストラ曲から、シンセ中心の音楽までいろいろと変わって来ました。

 LPが150枚を越えてから切り替えたCDも、すでに500枚(1994年当時)を越えてしまっています。その中には声優さんのアルバムや、アニメソングを含んだ一般歌手のアルバム、特撮の音楽、そしてその周辺のクラシック音楽をも含んでいますが、依然アニメのアルバムが多数を占めていることには変わりません。
 それらのアルバム達を材料に、自分なりのアニメ音楽史を語れたらなと、以前から考えていましたが、なかなか手を付けられずに来ました。一度にまとめて発表するのは無理でも、会議室の発言として少しずつ書いていくのは楽かななどと思い、最終的には発言を合わせるとひとつの形になっていることを祈って、ここに書きはじめることにしました。

 とりあえず、ヤマトから順に年代順に追っていきたいと思います。主要と思われる作品については独立して項目をあげていくつもりです。当然のことながら、取り上げる作品はアルバムを所有している作品に限られますので、独断と偏見の誹りを受けることは免れませんが、仕方がないでしょう。客観的には重要な作品でも無視することが多々ありますが、ご了承ください。

   (中略)

 なお、作者はアニメ業界やレコード業界とは何の関りも無いアニメ音楽の1愛好家に過ぎませんので、専門的な内容や裏話的なものなどは当然のこと書けません。記載内容に誤りがある場合もあるかも知れませんし、資料的な価値を期待されても困ります。
 あくまで、素人ならではの発想と切り口で書いていきたいと考えています。

              ヤマト誕生20周年の秋に(※当時)   結城あすか

はじめに

 これは、昔、パソコン通信ニフティサーブ内にあったアニメフォーラム上の会議室を1つ貰って数年間に渡って連載していた記事をリニューアルして再掲載するものです。

 大仰に「アニメ音楽年代記」と名乗っていますがオフィシャルなデータに基づく記録記事などではなく、あくまで著者が個人的に聴いて来たアニメ作品の音楽の中から重要なものを、1年辺り数本のペースでサントラ盤を紹介しながら振り返っています。

 もっとも、元がパソコン通信時代のものなので20年以上前の記事がほとんどであり、さらに当時から振り返ってかなり以前の作品しか取り扱っていないので、相当に古い作品が中心になりますが、今でもCDで復刻されたりしてる作品も多いので、そんなにレアな音源を扱ってはいないと思います。(ま、中にはCDになってないのとか、最後に復刻されたのが90年代半ばとかいうのもあるとは思いますが……)
 いわば、アニメ音楽のオールディーズを取り上げていこうというものですが、古いと言っても『鉄腕アトム』とかまでは遡りません。アニメサントラというものがファンに渇望され、商品として常態化するきっかけとなった『宇宙戦艦ヤマト』から連載は始まります。

 元の会議室では著者以外の参加者による独自記事やコメント等も掲載されていましたが、著作権の関係もありますので、ここでは著者自身による記事だけを元に構成していく予定です。
 既存記事がベースなので一気に掲載が理想かもしれませんが、編集等にも時間がかかりますので、ぼちぼちと更新していくことにします。