アニメ音楽年代記

サントラ盤を中心としたアニメ音楽の昔話

ヤマト音楽とドラマ編アルバム

1.ヤマトのサントラ盤との出逢いまで

 私がアニメ音楽に初めて関心を抱いたのは「宇宙戦艦ヤマト」でした。それ以前にも主題歌が好きな作品は幾つかありましたが、劇中のBGMまでも心に残った作品はありませんでした。
 まあこれは年齢に寄るところも多いと思います。ヤマトの最初の再放送(といっても関西在住ですので関東よりは1年ぐらいは早かったはずです)を見たのはちょうど小学校の高学年、ようやく主題歌以外の音楽にも注意がむくようになっていたのかもしれません。

 自分の意志で最初に買ったEP、LPはそれぞれヤマトのものでした。当時は新譜の情報なんて持っていないし、レコード店に行きつけていたわけでもありませんので、ふとヤマトのレコードが欲しくなって買ったのは78年の春のことでした。ちょうど中学校に上がる前の春休みにEP*1を買った覚えがあります。
 それはEPといっても穴が小さくて33回転盤。正確にはLPのミニサイズなのですが、便宜上EPと呼んでいます。A面に「宇宙戦艦ヤマト」と「真赤なスカーフ」、B面に「ドラマ・ガミラス絶対防衛線突入」が収録されていました。

 主題歌2曲はコーラス・グループがオリジナルとは違うロイヤル・ナイツのものになっていましたが、当時はそんな細かいことには気付きませんし、それよりもイントロの前のファンファーレみたいな曲が付いていないとか、ラストがフェードアウトしていないとか、TVで流れたバージョンと違うことに疑問を感じていました。TV音源はレコード発売用とは別個に編集されていることなんて知る由もありませんでしたから。
 でも、「真赤なスカーフ」の伴奏が全然違うのには気付きませんでしたね。この曲の伴奏までは記憶していなかったのかもしれません。
 ドラマはタイトルとは無関係に第3話のヤマト発進シーンと、第22話の七色星団の決戦を編集したものでした。これはこれで、感激したものです。当時テープレコーダーは家にありましたが、カセットが高くてTV放送を録音しようとまでは考えも及びませんでしたので。(小学6年当時、月に500円程度の小遣いで、カセットが1本500円程度だったから……)

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2.宇宙戦艦ヤマト オリジナルサウンドトラック盤

 それからしばらくしてLP*2を買ったのですが、このきっかけというのは偶然手に入れたヤマトのロマンアルバムにあった広告で知ったからです。広告の収録タイトルを見ると、先に買ったEPのドラマのようなものがより多く収録されている感じでした。買ってみると事実、そのとおりでした。
 内容はというと、劇場版に新たに付け加えたと思われる「無限に広がる大宇宙……」というナレーションに続いて主題歌「宇宙戦艦ヤマト」。冥王星海戦の敗退、遊星爆弾を説明するシーンのナレーション。そしてヤマト発進……。以降はナレーションで端折りながら、一部の印象的なシーンのみを収録していると言う感じでした。
 その頃は他にレコードを聴いていたわけでもなく、アニメのレコードなんてこんなものかなと思っていましたが、聴き込めば聴き込むほどBGMに関心がおよび、ドラマ抜きに音楽だけ聴きたいなという思いが高まって来ました。

 このドラマ編のアルバムですが、公称40万枚というアニメ・サントラ史上最高の売り上げを出したと言いますが、高々ドラマ編アルバムが何故こんなに売れたのか、いままで疑問に思っていました。単純なる音楽アルバムならともかく、ドラマ編なんて一部のファンにしか需要が無いのではないかと。
 しかし、いま改めて考えると、ドラマ編だったから売れたのでは無いでしょうか。ファンなら音楽を聴くだけで、そのシーンを思い出し感動することができますが、それは一部の人にすぎません。また音楽のないドラマだけのアルバムなら、やはりファン以外には感動を与えることはできないでしょう。
 ヤマトのドラマは宮川泰氏の音楽と密接に結び付いていて、それはLPのドラマも変わりません。ドラマ編と言っても音楽の占める比重は大きく、しかもその音楽はそれぞれ印象的なシーン*3に使われています。このことにより、このアルバムはヤマトのことをよく知らない人にもヤマトの音楽の魅力を伝えることができたのです。これがこのアルバムのヒットの最大の原因でしょう。
 単なるドラマ編ではなく、名音楽シーン集になっていたのですね。後の作品のドラマ編アルバムが単なるドラマ編でしかなかったのとは大きく異なっています。

 ただし、このアルバムがなまじ売れたためかどうか、あれだけのヒット作にも関わらず、肝心のBGM集は81年になるまで発売されていません。77、78年のブームの時に出ていればかなり売れたアルバムになったことと思われますが、返す返すも残念です。

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3.ヤマトのBGM集が出なかったわけ(?)

 ついでながら、81年に発売されたBGM集*4について、ちょっと触れてみましょう。
 発売されたのが『宇宙戦艦ヤマトⅢ』放映中ですから、初期のヤマトファンの中にはすでにヤマトから離れていってしまっていた人も多かったと思います。熱心なヤマトファンでも、このアルバムの発売を知らなかった人がかなり多いようです。
 内容はTVサイズの主題歌2曲と主要なBGM。もちろん多くの未収録曲が有り、それらは現在はパート1のLD-BOXのおまけとして聴くことができますが*5、選曲的には主要曲を網羅*6してはいます。ただし、曲間が詰まってしまっているのが難点で、プレーヤーで選曲して聴く時、針を落とす位置に苦労しました。

 いささか発売時期を逸したアルバムでしたが、どういう形であれ、発売されたということに意義が有り、ヤマトファンにとっては嬉しいことでした。現在なら、それなりにアルバムの売れる作品なら未収録BGM集まで出してくれる感じですが、当時はヤマトのような超ヒット作品でもなかなかBGM集は出なかったのです。というより、超ヒット作品だったから出なかったのかもしれません。
 現在ではCD化を前提にBGMが作られていますが、当時そういう発想はなく(そもそもヤマトLPのヒットから考えられたことですから)、レコード化の際には新たにレコーディングされるのが普通だったようです。当時もBGMそのままに収めたアルバムもぼちぼち出始めていたようですが、それらの多くは新たにレコーディングする予算が無いためにTV用のBGMを流用していたというのが真相ではないでしょうか。
 ヤマトに関して言えば、ずっと後、『完結編』に至ってもコロムビアから出ていたサントラ収録曲の多くは実際に劇中で用いられたものと違うバージョンでした。

 レコード発売するからにはTV用音源よりも立派な音楽にして出したいという意図もわからなくは無いですが、TVで馴染んだ曲との相違点が大きいと、やはり物足りなく感じてしまいます。ヤマトのアルバムについては、一部を除いて最後までそういう意味で失望させられ続けて来ました。
 しかし、それでもヤマトのアルバムに期待を抱き続けて来たのは、ヤマトの音楽の素晴らしさのためです。

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4.そして……

 最初のサントラ盤はBGM集ではなく、ドラマ編として出たヤマトですが、ヤマトの魅力の大きな要素が音楽であることは動かし難い事実であり、次いでシンフォニック・アレンジの『交響組曲 宇宙戦艦ヤマト』が発売され、そしてブームの高まりの中、続編『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が公開されます。次回はこの辺りを扱ってみる予定です。

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(記事初出 ニフティサーブ・アニメフォーラムマガジン館 94.10.17)

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LPはともかくCDはかなり入手困難みたいですね
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*1:宇宙戦艦ヤマト』(CH-53 77.07.01 ¥700)

*2:宇宙戦艦ヤマト オリジナルサウンドトラック盤』(CS-7033 77.07.25 ¥1,800)
 このLPは90年代半ばにヤマト関連のアルバムが一斉にCD化された際にラインナップの一つとして復刻されています。
  『宇宙戦艦ヤマト ―ドラマ編―』(COCC-12477 95.04.01 ¥2,427)
 また、2010年代になって出た『YAMATO SOUND ALMANAC』の全巻購入特典にもなっています。

*3:例えば「艦隊集結」というBGMがあります。この曲はヤマトの発進シーンやドメル艦隊の集結シーンに用いられていて、どちらかが印象に残っていると思いますが、このLPには両方のシーンが含まれています。

*4:『TVオリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART1』(CX-7008 81.01.25 ¥2,500)
 これも90年代半ばにヤマト関連のアルバムが一斉にCD化された際にラインナップの一つとして復刻されています。
  『TVオリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART1』(COCC-12869 95.09.21 ¥2,621)
 のちに『ETERNAL EDITION』や『YAMATO SOUND ALMANAC』のシリーズで商品化されたBGM集はそれぞれ別の構成で作られていますので、アナログ盤をそのままCDにしたのはこれと2005年の再発売盤だけです。

*5:原文の執筆当時の話。LDの各面の空き容量に数曲ずつ収録されてたわけですから、聴くのは非常に面倒でした。後に『ETERNAL EDITION』や『YAMATO SOUND ALMANAC』でほぼ全曲網羅されたCDが出ていますので、今や昔の話です。

*6:オープニング・スキャットからヤマトが地球を飛び立つシーンの音楽、デスラー登場の音楽、ワープ……等々、シーンとともに思い出すような音楽はほとんど入っているでしょう。ただしマニアになるとこれだけでは満足できないのですが。